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「今朝はすごかったねっ、高坂くん」 「まーなー……」 俺は疲れた声を守屋に返す。 あの後。 向かってくる旨美をいなし、ぶち切れた清水先輩の追撃をかわすわで大変だったのだ。 予鈴が鳴ってようやく解放された。 皆勤賞を狙う旨美と、風紀委員として生徒の模範とならねばならない清水先輩に遅刻は許されないのだった。 「教室の窓から見てたけど、高坂くんカッコよかったよ」 「そうか?」 「うん。カッコよかったよっ」 何が嬉しいのかわからないが、守屋はにこにこと俺のことを見ている。 その笑顔は、見ていて気持ちのいいくらい明るく清々しいものだった。 俺はその笑顔に、ひどくホッとするものを感じていた。 「守屋は良いよな、女の子っぽくって」 「え?」 「いや、どうも俺の周りにいるのを考えるとなあ……」 光音はなに考えてんだかわからない。旨美は殴ることに情熱傾ける男女だし、清水先輩は美人だけどアレだ。 指折り数えてみる。……尋常じゃない。尋常じゃないなあ。 ましてやさっきの騒ぎである。 守屋もオーバーリアクションだったりよくわからないコツを使ってみたりするが、他のに比べればマシに思えた。 「やっぱり守屋みたいに普通にかわいい女の子が一番だよ」 「え? え?」 俺の言葉にズザザッと守屋は後ずさる。 「な、何言ってるのかな高坂くんはっ!?」 「え、いやその……」 「ほめても何にも出ないよっ! 出ないんだからねっ!」」 「あのな守屋……」 「ででででもハトは出るかもっ」 「え?」 守屋が手をパン、と打ち合わせ開くと……本当にハトが出てきた。 しかも二羽。 「うわいったいどこからっ……」 突然の闖入者に、教室が騒然となる。 ハトは慌てるクラスメイトの上をばっさばっさと我が物顔で飛び回っている。 「高坂くんの机からは猫が出るかもっ」 守屋が机をポン、と叩くと俺の机からニャアニャアと声が。 二匹の子猫が机の中から出てきた。白と黒の愛くるしい子猫だ。 「やだかわいーっ」 隣の女子がその愛くるしいさまに嬌声を上げる。 その頭上ではハトが飛びつつクックルー。 なんだかもの凄い状態だった。 「すごい手品だな、守屋……」 「そうかなっ? そんなことないよっ!」 なんだか必要以上に照れる守屋。 いつもオーバーリアクションな守屋だが、後ろ頭をもの凄い勢いでかきながら照れを表現する守屋はどこかおかしいような気がした。 「いつの間にこんな仕掛けをっ……」 「タネも仕掛けもないよっ」 守屋は人差し指をピッと立て、 「でも、コツはあるんだよっ」 と、いつもの調子で言った。 が、表情はいつもの調子ではなく、なんだか少し頬を赤く染め、目はぐるぐるとまわっていた。 原因は分からないが普通の状態ではないらしい。 「お、おい守屋……?」 「あ、あとねあとね」 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン 守屋の言葉の途中で、ホームルーム開始を告げるチャイムが鳴る。 この状況下でうちの担任――時間をきっちり守る厳格なあの岩崎先生――が入ってきたらどうなるだろう。 未だハトは飛んでいるし猫はニャーニャー鳴いているのである。 「ス、スカートからは先生が出てくるんだよっ」 「なにぃっ!?」 守屋がくるりと一回転してスカートをひるがえすと……。 本当に、岩崎先生が出てきた。 「え? お? い、いつの間に教室の中に……?」 先生は不思議そうに辺りの様子を見ている。 ……俺の目の前ではいったい何が起きているのでしょうか? 「やだ先生どこから出てきてるのエッチーッ!!」 そんな先生に、守屋は理不尽な非難をしていた。 |
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