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おねえちゃん忘れてるっ!

その12

おねえちゃんが
夢見る乙女のメルヘンを
忘れてるっ!



「モモちゃん料理上手になったね〜」
「へへ〜ん、このシチューは我ながら絶品だと思うのよ」
「うん。あとはもう少し材料を綺麗に切れるようになるといいと思うな〜」
「そうねえ……ちょっと形悪いわね、これ」
「でもね〜、お料理に大事なのは愛情だよ〜。
 モモちゃんの料理はそれがいっぱいはいってるから大丈夫だよ〜」
「……愛情、か」
「?」
「そういえば、さ。おねえちゃんの男の子の好みって、どんな感じなの?」
「え〜?」
「なによ、教えてよ。いいじゃない」
「う〜ん……やっぱり女の子だから、白馬に乗った王子様に
 あこがれるよ〜」
「王子様? ……って、具体的にどんな感じ?」
「えっとね〜……」




「しくしくしく……」
「やあ、どうしたんだい美しいお嬢さん?」
「あ、あなたは〜?」
「王子様さっ」
「わ〜、すごい冠してるっ。それにお馬さんだ〜」
「そうさ、僕はただの王子様じゃない。白馬に乗った王子様なのさっ」
「うわ、すご〜い〜。うまうま〜。白い〜」
「ふふふ。それで美しいお嬢さん。なにをそんなに悲しそうに
 しているんだい?」
「あのね〜……悪い魔女に呪いをかけられて、ぱんつをはけなく
 なっちゃったの〜」
「おお! なんというかわいそうなことだ! つまり君は今のーぱん!」
「おおきな声で言っちゃだめ〜」
「のーぱんっ!」
「やめて〜」
「ああ……すまない僕ともあろうものが。
 でもこれは運命であるかも知れないな」
「え〜?」
「僕は后となる女性を捜しているんだ。城の魔法使いによると、この……」
「あ、それは……」
「そう、魔法のパンツ!
 このパンツが似合う女性が僕の后に相応しいという。
 だが、パンツをはいてくれと頼んでもみんな逃げてしまうんだ……」
「へ〜」
「この魔法のパンツなら君の呪いを解くこともできるかもしれない」
「え〜?」
「さあ、パンツをはかせてあげよう!」
「え〜!?」
「さあさあさあ!」
「や〜ん」
「あ、どうして逃げるんだい!?」
「いや〜ん」
「ははは。待て待て〜、僕のかわいい妖精さ〜ん」
「やんや〜ん」
「ぱんつはいておくれ〜」
「やんやんや〜ん」





「やめんかーっ!」
「きゃあああんっ!?」
「変っ! 変よっ! 聞いてると頭がおかしくなりそうだわっ!」
「変じゃなくて、メルヘンだよ〜」
「メル……ヘン……?」
「そう。メルヘン。だって王子様も出てくるし魔法も呪いも出てくるよ?」
「いや根本的に……もうなんて言ってあげたらいいかわからないけど、
 おねえちゃんには”メルヘン”より”メンヘル”の方が必要よっ!」
「めんへる〜?」
「メンヘルっ! メンタル・ヘルス! 心を癒すのっ!
 なんてーかこー、癒されてっ! おねがいっ!
 特にあたまを中心にっ! できれば今すぐっ!」
「あはは、モモちゃんダジャレつまらないよ〜。
 言ってることも支離滅裂だよ〜?」」
「ああもうどう説明したらいいのよっ!?
 おねえちゃんの頭の中は年中無休でメルヘンな感じなのに
 そこから出てきたお話しはどうしてこんなにもおかしいのっ!?」
「モモちゃん……」
「わたしだって小さい頃は白馬の王子様に憧れてたけど……
 なんかそれを壊された気分だわ……さようならわたしの
 幼き日の乙女のあこがれ……」
「よしよし」
「あたまなでてもらっても……それにしても、さっきの王子様ってなによ?
 いつものわたしとおねえちゃんとのやりとりと変わらないじゃない?」
「うん、それはね〜。いま一番好きな人がモモちゃんだからだよ〜」
「えっ?」
「モモちゃんはおねえちゃんの王子様なの〜」
「よ、よしてよっ。女の子同士で、それも血は繋がっていないけど
 わたしたち姉妹なのよ? そんなこと言われても困る……」
「おねえちゃんの方がこまるよ〜」
「そんなそんな……って、え?」
「冗談で言ったのにそんなにまじめに受け止められちゃうと、
 おねえちゃん困っちゃう……」
「お、おねえちゃんねえっ……!」
「さあ、シチュー食べよう?
 せっかくおいしくできたのに、冷めちゃったらもったいないよ〜」
「……そうね。こんなバカバカしい話しててもしかたないよね」
「うん〜。……でも、モモちゃんが一番好きだって言うのは、ホントだよ」
「え? 何か言った?」
「ううん〜。なんにも〜」
「そう……ところでおねえちゃん?
 今の話でちょっと気になったんだけど……
 いまパンツ、はいてる?」
「………シチューおいしいね〜」」
「……そう。そうなの。わかったわ。でも今はまあいいわ。
 次からはごはん食べる前にちゃんとパンツはくのよ?」
「………」
「もちろん、ごはん食べたあともちゃんとパンツをはくように」
「………」
「なんでどっちにも答えないの?」
「ごちそうさまっ!」
「え? もう食べ終わってるっ!?」
「ばいび〜」
「あ、こら待てえ! ぱんつちゃんとはけーっ!!」
「やんや〜ん♪」




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