| 前のおねえちゃん | |
「じゃあ行こうか〜」 「ちょっと待っておねえちゃん」 「ん〜?」 「……ちゃんとパンツ、はいてる?」 「今日は長いスカートだから大丈夫だよぉ」 「………」 「………」 「……おねえちゃん?」 「だ、だいじょうぶだよ」 「本当でしょうね?」 「じゃあ、確認する……?」 「え? ……って目を潤ませて上目遣いにスカート ゆっくり持ち上げないでっ!」 「だって……」 「わかったっ! 信用するっ! だからやめてっ!」 「うん……」 「ああもう、今日はお墓参りいくんだから、しっかりしてよねっ!」 おねえちゃん忘れてるっ! その4 おねえちゃんが 桜の下で 忘れてるっ! 「モモちゃんがうちに引き取られて、10年になるんだね」 「10年……父さんと母さんが事故にあって、 もうそんなになるんだね…… 」 「あ、あの桜の木、今年も咲いてる」 「うん……満開だね。おねえちゃんと初めて会った時みたい……」 「おねえちゃん、桜って好きだよ。みてると何か幸せ〜」 「わたしは……桜って嫌いだった」 「そうなの?」 「父さんと母さんが事故にあって、わたしすっごく悲しかった。 それなのに桜は満開で、その下にいる人たちはみんな笑顔で 楽しそうで……。わたしは悲しいのに、桜はなんだか暖かい色で、 きれいで……だから、嫌いだった」 「モモちゃん……」 「だから初めて会ったとき、おねえちゃんのことなんて イヤなヤツなんだろう、って思ったよ」 「え〜」 「満開の桜の木の下で、すっごく幸せそうな顔してて……。 とってもむかついたわ」 「ええ〜」 「こんな人が今日から自分のおねえちゃんになるだなんて、って思ってね。 でもそれからはそれどころじゃなかったわ。 おねえちゃんがこんなにドジだなんて思わなかった」 「そ、そんなことないよ〜」 「なにもないところで転んだり、塩と小麦粉を間違えたりする人のことは ドジって言うの」 「うう〜」 「出会ったときからドジ連発。あんまりひどいもんだから ほっとけなかったわ。 いっつもおねえちゃんのフォローばっかり。 忙しくて悲しんでる暇もなかった」 「ううう〜」 「憶えてる? ハチミツのビンひっくりかえして、 二人揃って頭から被っちゃったこと。 あの時からいっしょにおフロはいるようになったのよね」 「あれは甘かったね……」 「うん。ふふふ。ホント、忙しかった……」 「ねえ、モモちゃん」 「なに?」 「今は……桜って、好き?」 「……どうかな? でも、きれい。うん。綺麗だと思う」 「そう。……よかったね」 「うん……さあ、そろそろ行きましょうか」 「うんっ……わあっ!」 「きゃ、すごい風……おねえちゃんと初めて会ったときもこんなふうに 風が吹いて、スカートが……」 「ぺぅ、ぺっ、桜の花びら飲んじゃった……」 「スカートが……」 「ん? モモちゃんどうしたの?」 「おねえちゃん……あのときから本当に変わらないわね」 「うん?」 「ドジなところは相変わらず。とくにこのへんなんて全然変化なしっ!」 「な、なによぉ」 「このへんとかこのへんとかこのへんとかっ!」 「変なところ指ささないで〜」 「なにひとつ変わってないっ! なにひとつ! 一本もっ!」 「う〜、気にしてるんのに〜」 「うるさいっ! でがけにあれだけ言ったのにまぁた パンツはきわすれてっ!」 「ご、ごめんなさい〜」 「だめっ! 今日という今日は許さないわっ!」」 「うわ〜ん、モモちゃんがキレた〜 パンツのひもみたいにキレた〜」 「うわむかつくっ! もお怒ったわよっ! そこのコンビニで買ってでもパンツはかせてやるわっ! 無理矢理にでもはかせるっ!」 「や〜だ〜よ〜」 「逃げたっ! 逃げ足はやっ! ほんとにもうっ! おねえちゃんといると、落ち込んだり 悲しんだりする暇もないわ……」 「うわ〜ん〜」 「こらーっ、まちなさーいっ!!」 了 |
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