は〜とふるらぶこめでぃ
ほのぼのこがらちゃん
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その11 |
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「りんごりんご〜、リンゴ飴〜」 「………」 「あ、わたがし〜、うゆ〜」 「………」 「お祭りって楽しいわよねっ! おいしいものがいっぱい!」 「………」 「普段食べてもそんなにおいしくないのかも知れないけど こういうところで食べるとひと味もふた味も違う気がしない?」 「………」 「……しない?」 「お? ……おう」 「あのさあ……なんかあったの?」 「え? な、なな何が?」 「あたしがなんて聞いたか覚えてる?」 「えとその……浴衣、似合うな」 「な、なによ。さっきから何か聞くとそればっかり」 「す、すまん」 「今日は変。いつも変だけど、いつもと違う方向に変」 「変、か?」 「そうよ。 いつもだったら大暴走して妙な行動に出たあげく、 自業自得の大打撃で吹き飛ぶのに……」 「………」 「今日は不自然に神妙ね」 「むう……」 「ね? もしかして浴衣、似合ってないの?」 「な、何故っ!?」 「それでさっきから無理してごまかしてるのかなって……」 「そっ……そんなことはないっ!!」 「わっ」 「なんて言ったらいいかっ……! いつものお前は”かわいい”って感じだっ! それはもう果てしなくっ!! でも……今日のお前は”綺麗”って感じなんだよっ! それで混乱して……」 「よ、ようやくいつもの調子ね」 「だいたいお前に浴衣が似合わないなんてことあるわけないじゃないか。 古来より、日本人は背が低く、胴長寸胴だ。 その日本人が積み上げてきた文化の成果の一つ、浴衣っ! それは小柄にして貧乳のお前に最適にして最上の着衣だっ!」 「ホントにいつも通りね……」 「だいたい巨乳の女が着る浴衣なんて見苦しいだけだろう? おさまりきらない胸を色気と解釈する輩もいるが、それは浴衣の魅力ではないっ! 浴衣で演出される色気ってのはもっとこう………。 結い上げられた髪からこぼれる、ほつれ毛のうなじとかっ! 浴衣を着ることであらわれる身体のラインって言うか物腰とかっ! 一言で言えば、情緒っ! そう、情緒っ!! 今日のお前は情緒爆発だっ……ごふっ!」 「いつも通りに戻ったのでいつも通りに殴ってみました」 「く、くはっ……」 「あんたはやっぱり暴走バカね」 「とっ……とにかく……」 「ん?」 「今日のお前は、本当に綺麗だよ」 「! バ、バカね あ、あたしはね、何を着たって変わらないわよ。 どんな姿をしていようと、舞黒こがらよ」 「?」 「さ、いくわよ」 「お、おう」 「まずは、わたがしっ!!」 ・ ・ ・ 「うゆ〜、金魚さんかわい〜」 「おい、わたがしが髪についてしまうぞ」 「うゆ〜、うゆゆ〜」 「仕方ないなあ……よし、とってやろう」 「え?」 「金魚すくいは得意だ。網一つでバケツ一杯はとってやる」 「い、いいよ」 「ん? どうしてだ?」 「生き物をおもちゃにするのって、なんかやだな……。 見て喜ぶのも同じ事なのかも知れないけど、それでも……」 「………」 「それより、射的やりましょっ」 「……そうだな」 「銃っていいわよねっ! たとえおもちゃでも、なんていうかこう破壊欲が満たされるわよねっ!」 「こがら……おまえがわからないよ………」 「やあね、冗談よ」 「そ、そうだよな」 「破壊欲が満たされるって言ったら、やっぱり拳よ。 これに尽きるわっ」 「そ、そうなのか……」 ・ ・ ・ 「けっこう楽しかったわね」 「そうだなあ……。 ところで、どこに向かってるんだ?」 「覚えて……ない?」 「なんか見覚えがあるような気はするが……」 「ほら、ここ」 「あ、この場所……?」 「この神社の裏って、穴場なのよね」 「そうか……昔は、毎年ここに来てたよな」 「ふふ、やっと思い出したのね」 「いまでも人が来ないんだな」 「毎年きっちり駆逐してきたから……」 「え?」 「う、ううん何でもないっ!」 「なんだよ、気になるな」 「そっ、そんなことより……ほらっ! 花火っ!!」 「おおっ………」 「たまやーっ!!」 「なかなかスゴい。けっこう金かけてるな、町内会」 「そんなつまんないこと言わないっ」 「ああ、そうだな……」 「あたし、さ……」 「ん?」 「昔は、花火嫌いだったんだよ」 「そうだったか?」 「綺麗だけど、大きな音が恐くて………。 あっという間に消えちゃうのが悲しくて………。 暗い空の中、一瞬だけ光ってあっという間になくなってしまう花火。 なんだか恐かった。 だから、嫌いだったの………」 「………」 「ほら」 「? あっちに何かあるのか?」 「花火は消えるためじゃなくて、生まれるために空にあがるんだよ。 あの音は、消える音じゃなくて生まれる音なんだよ」 「? こがら?」 「その言葉を聞いてから、あたしは花火が恐くなくなった。 なんかそれから恐いものがなくなった」 「こがらの最強伝説ってそのひと言から生まれたのか?」 「もうっ……でもあたし、その言葉には本当に感謝してるんだ。 嫌いだった花火が、こんなに綺麗だったことに気づけたから………。 今こうして花火を眺めていられるのだって、その言葉のおかげだから………」 「それ……誰に聞いたんだ?」 「いまより、もっとまともだった」 「?」 「背の関係も、逆だったんだけどな」 「えっ?」 「………」 「………」 「ね?」 「ん?」 「花火はひとつひとつ生まれてくるんだよ。 だから、例え同じ花火でも、あがる毎に一つ一つどこか違う。 この星空もそう。毎年同じ星空じゃない。 目で見ても分からないけど、少しずつ星は動いている。 同じ星空は二度と見ることができない……」 「………」 「あたしも、そうだよ」 「?」 「6年前から……そりゃあんまり背は伸びなかったけど、変わってるよ。 毎日毎日、少しずつ……浴衣なんか着なくたって、昨日と違うあたしがいるの」 「………」 「あんたがいつも好きだというのは、6年前のあたし? それとも、あんたの好きなカッコウをした、あんたの想像の中にいるあたし?」 「こがら……」 「あんたが好きだと言っているのは誰?」 「………」 「本当に、目の前のあたしの事を見てる? 本当に………あたしのこと、好き?」 「………」 「………」 「俺は、さ」 「………」 「いつも困ってる」 「?」 「俺の好きな女の子は、そのままでもかわいい。 いくら言葉を尽くしても足りないくらい、どうしようもなくかわいい」 「………」 「それなのに、毎日かわいい顔を見せてくれる。 笑った顔はもちろん、怒った顔も、普段のふとした顔も……。 いつもいつも驚かされる。毎日見てる顔なのに、まるで初めてみたときのように、驚いてしまう。 それで……もっと好きになってしまう」 「………」 「どのお前が好きかと言えば……俺は、今のお前が一番好きだ。 過去のお前がいたから今のお前がいる。 今のお前がいるから未来のお前がいる。 ずっとずっと……何年先でも好きでいつづけたい。 好きになり続けたいんだ」 「あ、あんた相変わらず恥ずかしいことばっかり……」 「こがら」 「……」 「ほら、花火が生まれる」 「あ……」 「………」 「! ……ん」 「………」 「………」 「綺麗、だったな」 「ず、ずるいっ」 「ん?」 「は、花火で気を引いて………キス………するなんてっ! ずるいっ! 反則よっ! マナー違反よっ!!」 「いいじゃないか」 「何がよっ!?」 「花火を見るお前が、今までで一番かわいいと思ったんだ。 だから、仕方ない」 「!」 「もちろん、今の怒ってる顔もかわいいがな」 「も、もうっ……」 「こがら」 「な、なによ?」 「二学期も、よろしくな」 「もうっ……仕方ないわね。 幼なじみだし、同じクラスだし……あんたはバカだし」 「そうだな」 「まあ、隣に並ぶくらい許したげる」 「隣?」 「昔のあんたはいつもあたしの後ろをついてきたけど、今はそーゆーんじゃない。 前にいられたらうっとおしいし……だから、隣。目障りじゃない隣」 「それならさっそく……」 「! ……気安く人の肩をに手をかけないっ! 隣ってそういう事じゃなくって……」 「……嫌か?」 「……あ、あんたと話してると、ちっとも花火に集中できないわっ。 だから、もう何も言わない。あ、あたしはもう口聞かないからねっ」 「………」 「………」 「こがら」 「………」 「好きだよ……」 「……………バカッ……」 了 |