は〜とふるらぶこめでぃ
ほのぼのこがらちゃん
|
その5 |
|
「あとは火にかけとけばいいから、その間に魚焼いて………」 「こがら〜」 「? 玄関の方から?」 「入るぞ〜」 「あいつかぁ……… ったく図々しいわねぇ。 でもいまは手が放せないし………」 「こがら〜」 「わぁっ!!」 「ど、どうしたこがら!」 「………な、なんでいまさっき玄関にいた人間がっ!!」 「俺のことか」 「一瞬の間に台所にいてっ!!」 「ほう」 「あたしの耳元で話しかけてきてるのよっ!!」 「びっくりだな」 「びっくりだなっ! じゃないっ! どうやってそんな高速移動したのよっ?」 「好きという気持ちは時空を越えるんだよ」 「わけわからんわーっ………って、わ、料理料理………」 「何つくってるんだ?」 「おかずは昨日の暖めるからみそ汁ぐらいつくろうかな………っ て何であんたに説明しなくちゃならないのよっ!」 「大変そうだな」 「あんたが言うなっ! ………ひゃっっ!!」 「悲鳴が多いな」 「な、何? なんで後ろからあたしのこと抱きしめてるのよっ!」 「いや、エプロンが………」 「エプロンが?」 「あまりにも可愛くてっ!!」 「ああ、いつもどおりなのね………」 「仕方ないじゃないかっ!! ちょっと大きめのエプロンがお前の小柄さを強調してっ!! 青のストライプのシンプルなデザインが媚びた感じがしなくて 良くてっ!!」 「ふうん」 「なにより後ろの結び目がかわいいじゃないかっ!! そんなのが目の前でちらちらと揺れていたら、ほらっ! わか るだろう?」 「へえぇ」 「前から抱きしめるととせっかくのデザインが隠れてしまって悲 しいし」 「ほおぉ」 「台の上に乗って料理なんかしてるから、背丈があった状態で抱 きしめるってのが新鮮で………。 いや、背丈が同じ方がいいとかじゃなくっ! よりお前の小柄さ を強調して良いって言うか………」 「なるほどねぇ」 「料理をしているところにちょっかいをかけるというのがお約束 だし、これはきわめてフォーマルな状態なんだよ」 「台所だしね」 「台所だからな」 「台所っていいわよね………素敵な道具がいっぱいある。 出刃包丁が基本よね。アイスピックとか痛そうだけど当たり前 すぎてオリジナリティにかけるかしら。 バターナイフとか大根下ろしとか、あえて殺傷力の低いものを 選ぶのもいいわよねぇ………」 「テ、テーブルでおとなしく待たせていただきますっ!!」 「まったく………」 「………」 「………」 「………」 「………ん? ”待つ”って言った?」 「言った」 「もしかして食べてくつもり?」 「せっかくだから」 「あのねぇ………大したものないわよ。 今日だって本当に簡単なものしか用意してないんだから」 「そんなのぜんぜんかまわないってっ!!」 「まああんた一人暮らしで大変だろうから、たまにはいいけどね」 「いいのか?」 「仕方ないわね」 「やったっ! だから好きなんだっ!」 「調子いいんだから………」 ・ ・ ・ 「いっただきまーすっ!!」 「はい、どうぞ」 「パクパクパク」 「………」 「ズズッ」 「………ねぇっ」 「ん?」 「そのおみそ汁、どう? おいしい?」 「!………」 「ねえ、どうなの? ねえったらねえ?」 「お、おお。うまいよ」 「そう? やったっ! 今日のはうまくいったのよね。ふふっ」 「………」 「な、何いきなり泣き出してんのよっ! そんなにおいしかった?」 「いや、それはもちろんなんだけど………。 差し向かいで飯を食うというただでさえ嬉しすぎるシチュエー ションなのに、目をきらきら輝かせながら”おいしい?”なん て聞かれたから………なんだか感極まって………」 「あ、あんたねぇ………」 「しかも誉めたら素直に喜んでくれるし………それがあまりにも 可愛くてっ………!」 「あきれたわ」 「ううっ……うまい……かわいい………」 「………泣きながら食べないでよ。 ほんっっと、バカなんだから………」 ・ ・ ・ 「さて………そろそろ片づけるわよ」 「ええ〜。もうちょっとゆっくりしないか? この平和なひとときをもう少し堪能したいのだが……」 「ダメ。 一人暮らしなら身をもって知ってるんじゃないの? 洗い物って後回しにするとやりたくなくなるじゃない。 ため込んでるんじゃないの?」 「ぐうっ」 「そのまんまにしといて母さんにしかられるのはあたしなんだか らね。 とっとと始めるわよ。 あたしが洗って、あんたがそこのふきんで拭く。 拭いた食器はまとめて片づけるからテーブルの上に適当に並べ といて。OK?」 「OK」 「じゃっ、始めるわよ」 「………」 「んしょ……はいこれ」 「よしきた」 「きゅっきゅっと……はい」 「まかせとけっ」 「なかなか手際いいじゃない」 「楽しいからな」 「? 変なの。 まあいいわ。食べた分はきっちり働いてよね」 「はいはい………それにしても、さ」 「ん?」 「こうしてると、さっ」 「うん………はい、次これ」 「新婚さんみたいだよな」 「!!! ………ってきゃっ!!」 「お、危ない」 「ふう、セーフ………。 あんたがいきなり変なこと言うから手が滑るのよっ! 危うくお皿割るところだったじゃないっ!」 「変な事って………」 「まあ落ちそうになったお皿を一緒に支えてくれたのは感謝する けど………。 いつまで人の手を握ってるつもり?」 「できることならいつまでも」 「で、皿を持っている左手だけならともかく右手まで握られてる のは何故?」 「………お前のことが、好きだから」 「………」 「………」 「………」 「こがら」 「な、なに?」 「顔赤くなってるぞ?」 「そ、そんなことないっっ」 「熱でもあるのか? 大丈夫か?」 「って言いつつ顔近づけるなあっ!」 「だっておでことおでこで正確に計らないと」 「な、何言ってるのよっ!!」 「そう言えば……」 「?」 「初めてキスしたのもこの台所だったな………」 「!」 「………」 「………」 「こがら………」 「な、何………」 「こがらっ………!」 「や、やややめなさいっ! 怒るわよっ! それもかなりマジでっ!!」 「わ、そんなに動いたらっ………」 ・ ・ ・ 「皿、落ちたな」 「落ちたわね」 「割れてしまったな」 「誰のせいかしら」 「事故だと思う」 「何言ってるのよっ! あんたが変なこと言うのが悪いんじゃな いっ!」 「変な事じゃないっ!! 全開で本気だっ!!」 「ああもうそうやってごまかすっ!! って訳で殴るっ!!」 「うわ、なんか今日はひときわ理不尽な気がするぅ!!」 「外に蹴り出してからっ! 裏庭で殴るっ!!」 「やなシチュエーションだな」 「ご飯食べたんだから殴られてから帰りなさいっ!」 「わけわからん上にひどいっ」 「いっくわよーっっ!!」 「マ、マジか? う、うわわわわああああああーっ!!」 了 |