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は〜とふるらぶこめでぃ
ほのぼのこがらちゃん

その3
〜肩と膝と〜

 

「というわけでっ……
 来たぞっ!
 動物園っ!!」
「はぁ………
 何であんたなんかとこんな所にいるのよ、あたしは」
「はっはっはっ、いい天気だなあ。んん?」
「どうしてこんなよく晴れた休日にまでこんなやつと顔を合わせな
 くちゃいけないの……?」
「さあて、行くか”こがら”」
「いきなり小柄呼ばわりなんて喧嘩売ってる?」
「いや、今回は名前を呼んだだけだ」
「え?」
「舞黒 こがら(まいくろ こがら)。
 昔から変わらないお前の名前じゃないか」
「あたしってそんな名前なの?」
「ああ」
「マジ?」
「何言ってるんだ、お前は?」
「そう………そうだったわよね。
 あまりの問答無用な名前に理不尽な思いを感じて混乱したようだ
 わ……」
「はっはっはっ。なんだかよくわからんが、かわいいぞぉ、こが
 ら」
「……気安く頭なでないでよ」
「何を言う。
 なでなでは男のロマン。
 まして背の低いお前はきわめてなでやすく、なんて言うの?
 幸せ? みたいな?」
「………殴るわよ。全力で」
「そんなこと言っていいのかなあ!?」
「ああ、それはっ!
 幻の紅白パンダの赤ちゃん限定公開チケットッ!」
「珍獣の、それも赤ちゃんっ!!
 赤ちゃんパンダの体力のなさゆえ、公開される時間も人数も限ら
 れているっ!!
 しかも成長する動物が赤ちゃんでいられる時間は短いっ! まさ
 に一瞬の閃きっ!
 それゆえの激レアチケットっ!!」
「うう……パンダ……赤ちゃん……」
「これが欲しいんだよなあ、こがらぁ?
 俺にそんな口聞いていいのか? あぁん?」
「あんたサイテー」
「いいんだよ。
 俺は小柄なお前と一緒にいるためだったら、どんなことでもやっ
 てやる」
「………頭なでるのそろそろやめてくれない?」
「もう少し………あともう少しこの幸せを堪能させてくれ……」
「………そーいえば、実力でチケットを奪い取るって手もあるわ
 よね」
「さあ、早く来ないとおいてくぞっ」
「あ、ちょっと待ちなさいよっ!!」



「遅かったな、こがら」
「あんたが髪グシャグシャにするからなおしてきたのよっ」
「うん、かわいいぞ。
 ポニーテールにはやっぱり白いリボンだよな」
「別にあんたのためにしてきたわけじゃないわよ」
「でもいつもはゴムひもで止めてるのに、今日は違うだろ?
 そのリボンも俺の好きなデザインだし。
 何か嬉しいぞ」
「言ってなさい………それにしても凄い人混みねえ。全然見えな
 いわ。
 …よっと!」
「………」
「よっ! はっ!
 う〜ん、全然見えないわね……」
「こがらぁっ!!」
「きゃあっ!」
「そんなピョンピョン飛んだら周りの人に迷惑だろっ!」
「だからってなんでいきなり抱き止められなくちゃいけいないのよ
 っ!?」
「そりゃ背の低いお前が一生懸命ジャンプする様があまりにもかわ
 いくって……」
「ほぉう………」
「いやあのそーじゃなく揺れるポニーテールのあまりの愛らしさ
 に本能的衝動を抑えきれなかったってゆーか……」
「この状態からなら投げが有効かしら?
 投げてから最大威力の打撃をたたき込んで………」
「え〜とそのあの……ほら、これならどうだ?」
「ひゃっ?」
「ほ〜ら、高い高〜い」
「子供みたいに持ち上げられるのって、すご〜い屈辱的なんだけど
 ………。
 あたしこの状態でもそれなりに威力のある後ろ蹴りを出す自信は
 あるわよ」
「!……いやあのええと……そうだ、パンダ見えるか?」
「わぁ、本当に紅い〜。パンダちゃんかわいい〜」
「ふっふっふっ、堪能するがいい」
「それにしても微動だにしないなんて………
 あんた結構腕力あるのね」
「お前は軽いし、それに………」
「それに?」
「このために鍛えたからな」
「………バカねぇ」



「あの〜、こがらさん」
「パンダちゃん今こっち向いた〜。
 かわいい〜」
「さすがにそろそろ腕がつらいんですが」
「わ〜、笑ってる〜」
「パンダに表情はないと思うしっ」
「うゆ〜、かわいいよ〜」
「やむを得ない、こうなったら………!」
「うゆゆ〜………ってこら、何してんのよっ!」
「………最善の選択」
「わっわっ、へ、変なところに頭つっこむなっ!
 怒るわよっ! ちょっ、何するつもりよ!?」
「Shoulder Wheel!」
「な、なによそれ」
「和訳せよっ」
「Shoulder……肩? と、Wheelが、車………
 肩車!?」
「Yes,That's Rights!!」
「それ絶対英語違うっ!!
 っていつの間にか肩車完成してるしっ!」
「………」
「キュロットはいてきたのが不幸中の幸いね……
 ってちょっと、何か言いなさいよ」
「この感動は言葉にはならない………」
「は?」

「頭に添えられる紅葉のような小さな手っ!!
 後頭部から伝わるほのかな温もりと鼓動っ!!
 彼女の全身を支えているという確かな充足感っ!!
 顔の横にある、ダイレクトに触れてくる太股の感触っ!!
 これに勝る至福があるかっ?
 この世に、これ以上の幸せはあるかっ!?」

「この状態からなら……
 …鼓膜を破ることができるっ…!
 ……眼をつぶすことができるっ…!
 ………首をへし折ることができるっ…!
 …………頭蓋骨を砕くことができるっ…!」

「………」

「……………殺れるっ!!」

「ほほほほら、こがらっ! パンダパンダっ!!」
「うゆ〜、パンダちゃ〜んって………」
「どうした?」
「なんか周りの人の視線が痛いんだけど……」
「そりゃ、あれだけ騒げばなあ」
「逃げるわよっ」
「ラジャーッ!!」






「ここまで来れば問題あるまい」
「そうね………って、いつまで肩車してるつもりよっ!?
 早くおろしなさいよっ!!」
「俺は手の中にある幸せをみすみす捨てるほど愚かではないわあ 
 っ!!」
「何だかよくわかんないことで威張るなあっ!!」
「俺は一生このままで過ごすっ!
 誰にも邪魔はさせないっ!!
 はーっはっはっはっはっはっはっ!!!」
「………やっぱ殺るわ」
「あまいっ!!」
「きゃあっ!?」
「ほれっ!!」
「うわわっ!?
 あ、危ないっ! 揺らすなっ!!」
「この揺れでは攻撃できまいっ!!」
「確かに打撃は無理ね。でも………」
「グッ………!?」
「頸動脈を締めることは出来るわ」
「グゥッ………ググッ……!!」
「……落ちなさい」
「ウッ…ウウッ………ガクッ」





「全く迷惑ばっかりかけて………」
「………」
「珍しく本気で死にそうだったから
 さすがにやばいと思って介抱してあげてるのよ?
 感謝しなさいよね」
「………」
「って、さすがにまだ起きないか…。
 だいたいいつも死ぬほど殴っても翌日あっさり回復するやつが
 どうして頸動脈極めたぐらいですぐに復活できないのよ?」
「………」
「あのチケットとるのだって学校休んで徹夜して……
 あたしが『行きたいな』ってちょっと言っただけなのに、あそこ
 までするなんてね」
「………」
「いざ来てみればはしゃぎまくって暴走して。
 あんた加減って言葉を知らないの?」
「………」
「そんなに……楽しかった?
 あたしといて、そんなに楽しかったの……?」
「こがら〜」
「!?」
「膝枕してくれ〜」
「とっくにしてるでしょ………って寝ぼけてるの?」
「………」
「まあいいわ。起きたらちゃんと殴ろう。
 気の済むまで殴らないと、何かすっきりしないわ。
 ………だから、今だけは許してあげる」
「………」
「本当………バカなんだから………」




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